『富坂だより』 22号
2008年12月

特集: 食糧危機の再来か

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1992年NCC代表団が北朝鮮のピョンヤンを訪問し、家庭礼拝に参加した
(左から3番目:鈴木正三TCC総主事〔当時〕、中央:辻教団議長)




巻頭言

変革(脱皮)の時 ― 新法人申請を機に ―

今般、長い間放置されてきた全国10万に及ぶ財団法人(天下り特殊・個人財産維持・幽霊・休眠中のものを含む)の見直しが本年12月から向こう5ヵ年間に総務省によって行われることになった。その目指すところは公益法人と一般法人に二分することであって、後者は課税対象とすることにあり、それにも当たらないものは解散させることになる。当法人は現状のままであれば、一般法人はおろか解散の対象となることが指摘されてきた。

そこで当然、当法人は公益法人化を求めて、申請作業に入ることでドイツ・スイスの意志を含めて理事会決議の下、4月以降出発して今日に及んでいる。しかしながら、戦後財団結成以降の歴史の中で新法人申請に該当する実績の乏しさをはじめ幾つかの点で作業当事者として苦しんでいる。財団寄付行為によれば、伝道、教育、社会事業を目的とするとあるが現に富坂キリスト教センターの研究及び研修実績は公益というよりも宗教内事業とみなされてしまう事。駐車場、貸館など不動産収入が主であって事業自体が収益の消化であって自立していないこと。外国ミッションによって理事など役員が選任されていることなど新法はこれら一切を受容しないという点にある。非課税公益法人の成否をかけた申請の中で鍵となることは当法人が如何にして伝道、教育、社会事業の分野で事業体として変貌していくかにある。例えば、国際理解、交流を目指す国際学寮などは公益性が高いとみなされるのである。同じように研究や研修事業もキリスト教界に限らず社会教育、社会事業へと広げる公益に資するものと評価されなければならないのである。幸い当法人はドイツ・スイスというネットワークを持っている。国際交流を通して公益に資する人材育成も可能である。教界内でしか通用しないことばや思考から脱皮して、現今の荒廃しきった悩める社会のニーズがどこにあるかを見定め、それに対応する事業を展開していくことが要請されているのではないかと考える。教会、教団、NCC等は大切な協力者であることに変わりはない。しかし、当法人が事業体として脱皮、活動していくためには役員構成はその協議会であってはならない。事業にみあった専門分野から心血を注いで協力をしてくれる人を発掘、育成していくことが重要となってくると考える。

(ところひさお・CEAM財団 理事長)




【出版案内】
 『北朝鮮の食糧危機とキリスト教』 (「東アジア食糧問題」研究会編)

鈴木 正三


『北朝鮮の食糧危機とキリスト教』は1997年前後から明らかになっていった北朝鮮の食糧危機に驚いて、富坂キリスト教センターで始めた「朝鮮食料危機 支援ニュース」活動から始まった。このニュースは準備号から第6号まで続き、その流れはセンターの研究会として結実した。そして、約5年間の研究会活動をまとめたものがこの本である。

この当時は、餓死者が300万人に達したといった事態に見舞われていた北に対する食糧支援運動もさかんに行われていた。それを本書では、特にキリスト教会の支援運動にしぼって調査し、報告している。この調査は日本に留まらず、ドイツや韓国における支援活動にもおよび、非常に質の違った支援活動を知って、それも資料として収められた。さらに、その北の惨状から逃れてきた「脱北者」を3度も中国国境に行って調査した報告書も掲載されている。また、韓国に行って、脱北者から農業事情を聞いたりする、北の農業の実態研究も進めた。

このようにしてまとめた研究会メンバーの論文を中心に、後半は上記資料と、この間のNCC協議会の北への数回の公式訪問記録も巻末に掲載したから役立つだろう。最後の「東北アジアの平和と正義」(1984年)という声明文は、ここ30年間の東北アジアキリスト者の社会正義全般に対する基本姿勢をしたためた貴重な文献だが、今回始めて日本文として掲載できたのは、本書のもう一つの貢献だったと思っている。

    出版記念講演会 『北朝鮮の食糧危機とキリスト教』
    時:2009年2月21日(土)午後2時〜5時
    所:日本キリスト教団新潟教会




これからの食糧事情をめぐって

 鈴木 正三

(1)1997年と2007年の比較

『北朝鮮の食糧危機とキリスト教』という本の出版記念講演会を本日この神戸学生・青年センターで開くことが出来ますことを心から感謝します。特に、思いがけなくも韓国から朴ソンジュン先生が参加してくださり、東京からは重村先生がわざわざ来てくださいました。こんなにちいさな講演会なのに、こんなに豊かな人材が参加した、高密度の内容が保証された会はめったにありません。後半の話し合いが楽しみです。

今回出来上がってきた本を見ながら出版記念会を企画してみて、本当に驚いたことがあります。10年前に北朝鮮に起こった食糧危機とその結果による大規模な餓死が、今年もまた北朝鮮に起こりつつあるというニュースを見たからです。

『北朝鮮の食糧危機とキリスト教』の91ページに、1997年5月22日発行の「北朝鮮食糧危機」ニュースが掲載されています。ジュネーブ発AFP 国際児童基金(ユニセフ)は9日、北朝鮮政府が、子供達7人にひとりの割合で深刻な飢餓状態にあり、すでに134人の子供が栄養失調などで死亡したことを始めて確認したと発表した。」と書かれていました。ところが今回の出版記念講演会の準備で、韓国その他のネットワークから直接、現在の北朝鮮の食糧事情につい資料を集めたのですが、集めれば集めるほど、北朝鮮の様子が10年前の様子に非常に似て来ていることを知ったのです。

(2)餓死者が再び出ているというのは本当か

最近の北朝鮮のニュースでは、「食糧危機問題」などの項目は消え、もっぱら「拉致問題」や「北の核兵器問題」ばかり取り上げられています。したがって、最近は北の農業事情も落ち着き、食糧問題はなくなってきているのかと思っていました。ところがそこに突然韓国から「餓死への進行過程」などの図が書かれたレポートが送られてきたのです。この図はこの講演会の為に準備した資料集の21ページにあります。19ページには、300万人と言われた大量餓死者を出した1997年から2007年までの北の食糧生産量のグラフが載っていますが、その餓死の時代より現在の方が生産量が明らかに下がっているのです。また、「2008年の北朝鮮の食糧難の状況と人道支援」というレポート(資料集10ページ)には「餓死者の発生」として、4月初め、全国の非行少年保護所、孤児院、養老院などの養護施設で餓死者が発生。4月末、黄海南・北道の農村で餓死者が発生。6月現在、黄海道地域で餓死者の発生率が急速に上昇。平安道、江原道などに広がっている。とあります。これは今年5月26日ソウルで開催された「良い友達」という仏教系団体の会で報告されたものです。

(3)これからわれわれがすべきこと

ところが、日本の状況は拉致問題一色で、餓死のニュースはどこを見てもありません。しかし、資料集の年表を見てもらえば分かりますように、拉致事件が起こって約20年間、政府は知っていたのに沈黙していたのです。そして社会問題になってから政府はこの問題を突然取り上げるようになり、丁度阿部政権の時代に、この拉致問題を梃子に日本を急激に「国民保護法」などで軍事国家化に誘導したのです。そして、その流れの中で北への食糧支援を法的に完全ストップさせました。

たしかに、北朝鮮と日本の間には2002年の日朝ピョンヤン宣言で明記された第二次世界大戦の賠償問題と国交正常化問題が横たわっています。そして、戦前の歴史には朝鮮半島から日本へ強制拉致した巨大な問題が未解決なのです。北朝鮮から見て、この賠償問題と国交正常化を経ずして、現在の拉致問題を解決できる道はないと考えるのは当然でしょう。他方、日本から見て、人道問題としての拉致は、他と比較して解決できる政治問題などではありません。国の威信をかけて断固帰還させるべき問題です。

そこで、われわれは提案したいのです。拉致問題は圧力と対話の両輪で解決できる問題ではない。あくまでも人道問題として解放させるべきである。政治化させ、政治に利用してはならない。しかし、同時に、国家賠償と国交正常化交渉を早期に妥結させるべく、政府はもっと努力すべきである。この両者の解決なくして拉致問題の解決はないからである。しかし、再発している食糧危機に対しては、政府レベル、民間レベル共に、人道問題として、工夫して食糧支援を再開する。実はそれによって全体の流れを和解に持っていくことが可能になると考えるからである。


神戸学生・青年センターに集まった皆様

(すずきしょうぞう・「東アジア食糧問題」研究会座長)




財団法人基督教イースト・エイジャ・ミッション職員募集

財団法人 基督教イースト・エイジャ・ミッションは、長年ご協力いただいたスタッフの定年退職に伴って2009年4月1から以下の職員を募集いたします。

    山上国際学寮事務主事(寮長)1名
    週35時間:寮の教育プログラム、入退寮、賃貸・光熱費清算、日常生活上相談などを担当

    富坂キリスト教センター事務主事(ハウスマイスター)1名
    週25時間:駐車場・敷地・建物管理、基本修理・樹木剪定、外回り掃除、ゴミだしなどを担当

    富坂キリスト教センター事務主事(経理担当)1名
    週35時間:財団・センター会計、駐車場・賃貸契約、会議室・客室受付、事業開発などを担当

    富坂キリスト教センター嘱託職員(研究主事)1名  
    週18時間:社会倫理研究会関係事務、講演会、出版物管理、『富坂だより』などを担当

ご応募の際、「職員応募書類」と朱書きの上、次の書類を2009年1月31日迄(必着)書留にて送付して下さい。
1)履歴書(写真貼付下さい)、2)業績書(これまでの仕事について)、3)志望動機書(今後の仕事上の抱負と希望など)、4)教会の推薦状があることが望ましい

宛先は: 〒112-0002 東京都文京区小石川2-17-41  財団法人 基督教イースト・エイジャ・ミッション事務局宛








【出版案内】
 『憲法九条を沖縄・アジアから見つめる』 ( 「思想・良心・信教の自由」研究会編)

 飯島 信


本書は、2005年度より富坂キリスト教センターの研究団体として発足した私たちの研究会の3冊目のブックレットとなる。1冊目の『この国に思想・良心・信教の自由はあるのですか』は、座談会メンバーに池明観氏(金大中政権で日韓共同歴史研究韓国側代表、韓日文化交流政策諮問委員長、日韓文化交流会議韓国側座長、KBS理事長等を歴任)、2冊目の『この国に生きる ― 東アジアの一市民として』は、同じく朴世逸氏(金泳三政権で大統領政策企画首席補佐官、大統領社会福祉首席補佐官、ハンナラ党政策委員会委員長及び国会議員等を歴任)を迎えて、アジア的視点、特に韓国からの視点で課題を捉える試みを行った。そして、3冊目の本書では、日本国憲法第9条とは本土の人間にとってどのような存在意味があるのか、又沖縄・アジアにとって、同じくいかなる存在意味があるのかを明らかにしようとした。それは、学校現場における「日の丸・君が代」の強制に象徴される思想・良心・信教の自由を弾圧する動きと、平和憲法を変えようとする動きは、まさしく密接不離の事柄として私たちの前に現れているとの問題意識から生まれた。

本書の座談会の中で、饒平名長秀さんは次のように語り、本土の平和運動の持つ問題性を指摘している。

「日本国憲法の平和主義、特に第九条というのは…第二次大戦で最も悲惨な地上戦の展開された沖縄を切り捨て、これを犠牲として、その上に成立したものです。護憲運動が盛んになればなるほど逆に、沖縄の基地は強化され、固定化されるという矛盾をはらんできたのです。…一言で言えば、日本国憲法の平和主義は、62年間の軍事植民地としての沖縄の犠牲と呻きを担保として維持されてきたということです。」(39頁)

つまり、戦時下のみならず、戦後もなお一貫して、私たちの平和運動は沖縄の犠牲の上に成り立っているという指摘である。本土における憲法九条を守れという運動は、同時に沖縄の基地を撤廃する運動として展開していかなければ、沖縄切り捨て以外の何ものでもなくなるのである。このことを意識して平和運動に取り組んでいる本土の人間が、果たしてどれほどいるのだろうか。少なくとも私は、指摘されて初めて知ったのである。

研究会では、いよいよ思想・良心・信教の自由の根幹をなす、それぞれの生きる拠り所の問題を正面から取り上げ始めた。非信仰者(高橋哲哉氏の言葉)にとって、そして信仰者にとって、それぞれの生の「根拠」(同)とは何か。12月6日の研究会では、非信仰者である高橋哲哉氏の発題への応答として、岡本厚(『世界』編集長・非信仰者)、根田祥一(『百万人の福音』編集長)、濱野道雄(日本バプテスト連盟宣教室長)の三氏が、思想・良心・信教の自由の問題へと関わる自らの生の「根拠」を明らかにしていく。

(いいじままこと・「思想・良心・信教の自由」研究会研究主事)








2009年夏の第2回合同牧師研修会の予告
 ― 再びクラッパート教授を招いて ―

 武田 武長


富坂キリスト教センターの第1期の牧師研修は、2003年度から「主を畏れる」の主題のもとに開始され、池田伯牧師が委員長を務め、青森・八甲田(渡辺兵衛牧師が主事)、鹿児島(布田秀治牧師が主事)、松山(広瀬満和牧師が主事)で開催され、5回の研修を重ねた後、第1期各地域牧師研修の総まとめとして2006年8月に、それまでの研修会に参加された方々を中心に、新しく参加希望の方々も加えて、ドイツのヴッパータール神学大学の組織神学者ベルトルト・クラッパート教授を迎えて、箱根の自然の中で合同牧師研修会をもった。

この第1回合同牧師研修会は特に「新約と旧約はどう関係するのか」を主題として開催され、参加者は3泊4日祈りと生活を共にし、発題や講演、牧会的対話などをとうして深く学び、「主を畏れる」内実をさらに明確にされ、自らの牧師としての務めについて、また今日における教会形成について、よき方向性を与えられた。

「御言葉の奉仕者」に召し出されている者にとって、旧約聖書と新約聖書を「聖書」とするとはどういうことか、その両書において語り給う同一の神とは誰なのか、イエス・キリストの福音とは何か、といった基本的問題にあらためて目を向けるとともに、これからもさらに目を向け続けるべく問われもした。また祈りつつ学びつつ歩むこの共同生活としての合同牧師研修会の中で、次回は「主の晩餐」を共にしたいという思いを強くした。わけてもドイツからのキリスト者(兄弟)としてクラッパート教授は日本のキリスト者(兄弟姉妹)との「主の晩餐」を共にすることを心から望んで再会を約したのであった。さらにまた、この合同牧師研修終了後、その祝福に満ちた会のことを伝え聞いた方々の中から、日本キリスト教団以外の他の教派教会からの参加の道も開いてもらえないだろうか、という声が寄せられた。富坂キリスト教センターとしては、これらの事柄をすべて真剣に受け止め、その実現の可能性を最大限に努力してきた。  

さて、2007年度から第2期の牧師研修が始まったが、今期は新潟教会の上島一高牧師が委員長を務め、佐渡教会の三村修牧師が主事を務め、既に2回の地域牧師研修会を佐渡教会を会場にして開催してきた。第1回佐渡牧師研修は「主は強さを求めない」を主題とし、福音の光のもとでキリスト教的実存の「身体性」に目を向け、祈りと御言葉の学びの共同生活の中で「自分たちで賛美歌を作り出す」歩みを経験した。第2回佐渡牧師研修は「真ん中に立ちなさい」を主題にし、福音の光のもとで「癒しの問題」に目を向け、かつJPIC(WCCの「正義・平和・被造物の統合」という課題)への応答を試みた。

これまでの第2期地域牧師研修の総まとめとして、来年度の夏にやはり、これまでの研修会に参加された方々や新しく参加を希望する方々を加えて、第2回合同牧師研修会を開催することになり、実行委員長に選出された私は、去る11月4日に、第2期地域牧師研修委員長の上島一高牧師と主事の三村修牧師、そして前回合同牧師研修会の委員を経験した鈴木正三牧師に集まってもらい、富坂キリスト教センターにおいて実行委員会立ち上げ準備会を開いた。

2009年8月31日〜9月3日まで3泊4日で箱根において第2回合同牧師研修会を開催し、前回に引き続いてドイツのヴッパータール神学大学のクラッパート教授を講師としてお招きし、「御言葉の奉仕者」にとって最も基本的な課題である前回の主題をいっそう深く掘り下げるべく、「旧約聖書と新約聖書の関係」とすることとした。既にその準備をしているクラッパート教授からは、「日本の教会では旧約聖書が説教のテキストとしてどのように解き明かされ、礼拝の中で説教されてきたか」、「イザヤ書53章は、新約聖書とのかかわりにおいて、どのように説教されているのか」といった課題が出されている。また、日本キリスト教団以外の他の教派教会からの参加を考えて、実行委員会にはまずはそのような声を届けてくれた寺園喜基氏を通じて日本バプテスト連盟宣教研究所の濱野道雄所長に入っていただくこととなった。この5人が第2回合同牧師研修会の実行委員となり、正式に第1回の実行委員会は2009年度の始まる4月に行われる。その後で、来年夏に開催される第2回合同牧師研修会の正式な案内は各方面に送り出されるはずである。

(たけだ たけひさ・合同牧師研修実行委員長)





山上国際学寮もうすぐスタート

ゾンターク・ミラ

前号で財団法人基督教イースト・エイジャ・ミッションの構造改革やそれに伴う「国際の家」の「山上国際学寮」への移行などについて報告した。我々は、2009年4月以降、富坂キリスト教センターが30年前からつちかってきた社会倫理問題への取り組みを生かして、山上国際学寮においても、教会の枠を超えて、特に将来の国際社会の担い手である若い世代に、この雰囲気を浸透させたい。学際研究所である富坂キリスト教センター自身も、これから山上国際学寮に住む学生・研究者の皆さんから多くの刺激と力を与えていただきたい。

寮のリニューアルに向けて、(主に夏休みの間に)すでに部屋の半分は改装され、必要な場合にはバスやキッチンも交換された。現在は、1号館にある会議室が図書ラウンジに改造されつつある。これまで20年間以上使われた施設は、老朽化により修築せざるを得ないものの、工事全体に関しては最低限の予算で最大の効果がもたらされるよう努力している。残された寮の部屋、共用キッチンと玄関は、早稲田大学生の帰国後(2009年3月)の改装を予定している。

リニューアルの後、4月から速やかにスタートできるように、またできるだけ数多くの入寮希望者が来てくださるようにと願っている。山上国際学寮は、地理的に東京のど真ん中、有名な東京ドームの近くでありながら閑静な住宅街に位置し、交通の便は地下鉄4線の駅(丸の内線「後楽園駅」、南北線「後楽園駅」、大江戸線「春日駅」、三田線「春日駅」)に徒歩5分から10分という至便の地で、各大学に通うには非常に便利である。読者の皆さんからも是非入寮希望者を紹介していただきたい。そのために、改装後の写真と共に、施設の詳細と入寮条件について紹介しておきたい。

    共用設備:台所(26 m2)屋上物干し場、シャワー浴室、男女別トイレ、談話室(26m2)、図書ラウンジ(60m2)
    ひとり部屋(13m2、12部屋あり):60,000円(共益金込み、光熱費別) 電話、ワイヤレスインターネット、机、ベッド(100 x 210のロング・サイズ)、ロッカー、バルコニー
    ふたり部屋(26 m2、6部屋あり):100,000円(共益金込み、光熱費別) (ひとり部屋常備品の外に、台所、冷蔵庫、ユニットバス、トイレ)
    家族部屋(2K、50 m2、3部屋あり):130,000〜150,000円(共益金込み、光熱費別) (電話、ワイヤレスインターネット、机、ベッド(100 x 210のロング・サイズ)、ロッカー、ロッカー、台所、ユニットバス、トイレ、玄関)
入寮許可の条件:
    1.東京都下の大学に在籍する研究者および学部4年生以上の学生。国籍を問わないが、最低在寮期間は3ヶ月とする。
    2.留学生の場合、在留資格として、「留学」を有する者。外国人研究者の場合、「研究員」または「教授」などを有する者。
    3.勉学の意志を持ち、共同生活による国際交流を通して自分を作り上げていくことを望む者。 4.山上国際学寮規則を守る者。
    5.入寮面接を経て入寮許可を得た者。
入寮申し込みの手続きと入寮決定:  申し込みは一年中可能。ただし、2009年4月当初の申し込みの受付は、2009年2月1日に開始。入寮申し込みに必要な書類はホームページ ここからダウンロードのこと。書類は「山上国際学寮入寮申し込み」と朱書きの上表紙記入の住所まで送付して下さい。

(ぞんたあくみら・TCC総主事)





シリーズ・ドイツから直行便で E

マルティン・ルターの聖餐理解をめぐって
― ルターの10年を機に ―

相賀 昇

今年9月、ドイツの教会が宗教改革の町ヴィッテンベルクでルターの10年(Lutherdekade)を始めたというニュースに接した。アウグスチヌス派の修道士であったマルティン・ルターが城教会の扉に95条提題を貼り付けたのが1517年10月31日。それから五百年目にあたる2017年に宗教改革五百年祭を祝うため、その準備を始めようというのである。1508年、当時エアフルトの修道院において救いの確信をめぐって苦悩を極めていたルターは、そこから新しく出来たばかりのヴィッテンベルク大学へと、最初は哲学教授として移ってきたという。その意味で今から五百年前の1508年という年もまた、ルターにとって「その時」を迎えるうえで重要な転機の年だったことが分かる。

1520年、ルターは『教会のバビロン捕囚について―マルティン・ルターの序曲』を著し、そこで秘跡(サクラメント)を根底から問い直した。そして最終的には七つの秘跡のうち、洗礼と聖餐を除いたすべてから恩恵の通路としての性格を取り去るのである。それはかつてイスラエルの民がバビロニアによって捕囚となっていたように、当時の教会の秘跡理解と体系こそがキリスト者を隷属させていたという批判であり、誤った教会の教えからの解放を説くものであった。

もちろん聖餐をめぐっては、パンとぶどう酒においてキリストの体と血とがどのような形と意味で臨在するのか、福音主義の諸教会においても長く険しい議論が起こったのであり、それがなお現代に至っている。しかしルターが聖餐において、それまでぶどう酒には司祭のみが与り、パンだけが分餐される「一種陪餐」(communion sub una)だったのに対し、パンとぶどう酒の双方を分餐する「二種陪餐」(communions sub utraque)へと開いたことは大きな新しい変化として見逃すことができない。



クラーナハによるルターとフスの聖餐式

ルターの親友である画家ルーカス・クラーナハの版画にルターの聖餐理解、つまり二種陪餐の模様を比喩的に描いた作品がある。1550年頃の作とされるが、そこには左側にルターが立ってぶどう酒を分餐し、なんとその右にはボヘミアの宗教改革者ヤン・フスがパンを分けている。フスは1415年異端とされ火刑となった人物だが、100年前の隣国の先駆者をルターと並べて登場させているところが面白い。また中央の祭壇には十字架のイエス像を戴く噴水が描かれるが、その十字架の主の傷からは命の水が流れ出ており、こうして聖晩餐におけるキリストの現臨(Realpraesenz Christi)を象徴的に示そうとしたのである。  このように五百年前、ルターがサクラメントと聖餐にいかに大きな新しい変化をもたらしたか改めて驚かされるが、しかしそれもまた彼の著書の副題が示すように、まさに序曲(プレリュード)であって、教会は常に改革され続けるべき教会(ecclesia semper reformanda)であることも思わされる。

現在、日本キリスト教団内では聖餐式の執行をめぐって議論や対立が起きている。確かに聖餐を福音書の「五千人の供食物語」が描いているように、主イエスが招く開かれた食事として祝うのか、それともディダケーが示すように、受洗者のみに与えられた特別な秘儀である閉じられた儀式として執行するのかは大いに議論があろう。ただ主イエスが弟子たちを招いた最後の食事において、主は弟子たちの不信仰を知りながら、むしろ不信仰であるからこそパンとぶどう酒に託して自らの命を彼らにお与えになったのではないだろうか。

いずれにせよ、聖餐の根拠となる最後の食事を教会は様々な形で解釈してきたのであり、ルターをはじめ宗教改革の流れを汲む私たちであれば、なおさら様々な可能性の中にあるように思う。その際重要なこととして、聖餐の場へと招いておられるのは主イエス・キリストご自身であり、教会は主イエスの招きを伝える立場にあるということではないだろうか。その意味で聖餐をめぐってはまずは多様な解釈と実践のあることを認める必要があると思われてならない。   

(あいがのぼる・日本基督教団田園都筑教会牧師)




シリーズ ひと・ひと・ひとN
 宗教教育研究会座長   鈴木範久 さん

今回ご紹介する鈴木範久さんは2006年4月から発足した「日本の国公立学校における宗教教育」研究会の座長である(担当主事はゾンターク)。研究会の研究活動は計画通りに今年度をもって終わるが、2009年末までに成果を本にまとめて出す予定である。本研究会は他のセンター研究会とは違って、キリスト教界を対象とするよりも、日本社会そのものによびかけるものである。特に国公立の教育制度は、国民一人ひとりの価値観に最も強い影響を及ぼしているから、教育制度を左右している政治家や官僚、教育の担い手である教員を対象に考えている。「国公立」という課題は、この研究会に集まってきた教授たち(多国籍にもかかわらず)にとっても刺激的であった。義務教育の年齢範囲(6〜15歳)では、私立学校が学校全体で占める割合は僅少である。それを宗教教育として私立だけを考えることは、大多数の生徒の宗教認識を完全に現行の学習指導要領に任せることを意味している。そうはいかんという意識は研究会のメンバー全員に共通していた。

愛知県うまれの鈴木さんは若き日に、戦後の日本で最初の社会調査、宗教調査に取り組んだノーヴェックやビアーズレーらアメリカ人文化人類学者をアシストして働いた。立教大学に勤めはじめたころ、『期待される人間像』が出版されて話題になった。その関係で文部省への取材や、一般の反応の観察、日本人の宗教意識調査をおこなった。大学教育では、キリスト教徒でない学生に如何にキリスト教を教えるかという課題に苦闘、同校では、はじめて宗教学も開講した。つまり、宗教教育に関しても三十数年にわたる、いわば実体験の持ち主である。あわせて定年退職まで、全国にわたり国立大学や宗教系大学などで宗教学、比較文化論、文学などを担当してきた。定年後も現在まで人事院公務員研修所で課長研修をつづけ、ときには文科省の課長から「日本の教育はどうしたらいいでしょうか」などと聞かれることもあるそうである。現在、宗教教育の分類として「宗教知識教育」、「宗教情操教育」、「宗派教育」、「宗教安全教育」、「宗教文化教育」などの概念が流行っているが、二年間の本研究会の意見をくんで「宗教を考える教育」という案でまとめ、今に至っている。

鈴木さんは、日本のキリスト教史を幅広く研究してきた中でも、特に内村鑑三研究への貢献が大きいと言えよう。岩波書店の『内村鑑三全集』(全40巻)の編集・解説にも関わったが、それ以外に、研究者にとって不可欠で不可避である『内村鑑三日録』(全12巻)を出版した。図書館などにある資料を非常に丁寧に調べることだけではなく、日本各地に旅をして歴史の証言者あるいはその跡継ぎを尋ね、未公開の資料の発見にあたかも砂金掘りのように専心してきた。しかし、鈴木氏はキリスト教史の研究を基盤にしながらもそれを超える視野を持ち続け、社会と文化と宗教との相互関係を解明するように努力している。我々の宗教教育研究会にもそれが反映されている。

(聞き手・文責:ゾンターク〔TCC総主事〕)


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